◆ハロウィン◆プリアサ


「トリック オア トリート!」

■ハロウィン

「志貴、ハロウィンだぞ!」
「あ、あぁそうだな」

急に部屋の扉を開いて、相方のベテルが叫びながら入ってきた。
今日は10月31日、ハロウィンだ。
子供達が仮装してお菓子を貰いに家々を回るというイベントなんだが…

「ベテル…お前なんでそんな格好してるんだ」
「ハロウィンといえば仮装だろ?そんな訳で作ってくれたから着てみたんだが」
「作った!?それを?」
「カリオストロがさ、やっぱり手器用だよなぁ」

手が器用とかそんな問題じゃない気がするが。
今日のベテルの格好はいつものプリーストの法衣じゃなく…レースひらひらな真っ赤な服、背中には十字架。

「イビルドルイドか」
「正解♪志貴にもって服預かってきたから着てみろよ」
「俺も?」
「ほれ」

手に渡された服を見る。
やっぱり、白いレースがヒラヒラ。
ベテルの物より多い気もする。
えーと、これは…

「ドラキュラ」
「似合うはずだから着てみろって」

ウキウキとそんな事を言うベテルに少し呆れつつ、せっかく作ってくれたのだからと着てみる事にした。

「待ってましたよ〜、さぁお手伝いして下さいね」

着替えた俺に待っていたのは、カリオストロの知り合いの子供達にお菓子を配るという仕事だった。

「ベテル、こんな事するなら先に言っとけ」
「俺だけじゃ恥ずかしいだろこんな事、志貴が一緒ならいいかなと思ってさ…嫌だったか?」
「いいや、子供嫌いじゃないし…ベテルが一緒ならいいや」

ベテルの顔が一瞬赤くなった気がしたが気のせいか?


1時間後、持っていたお菓子もなくなりカリオストロから開放された。

「お疲れ様でした、コレ余ったので2人で別けて下さいね」

手渡されたひとくちケーキやスティックキャンディ。

「志貴お疲れ、助かったよ」
「ベテル、トリック オア トリート?」
「へ?」
「お菓子くれないと悪戯するぞ」
「は、悪戯って…」

俺はベテルがかけていた眼鏡をスっと奪い取った。

「なっ?志貴!」
「ははは」
「お前なぁ、カリオストロからお菓子渡されたのはそっちだろ、持って行っていいよ」
「ベテルからは貰ってない」
「そんな、んじゃ俺もトリック オア トリート!って初めに言ったじゃないか」
「確かに」
「俺も貰ってないから悪戯してもいいって事だよな?」
「え?」

逃げていた腕をつかまれ、ベテルに抱き締められる。

「捕まえた、さてどんな悪戯しようか?」
「ベテル…口開け」
「ん?」

首を傾げながら素直に口を開けたベテルの口にひとくちケーキを押し込んだ。

「俺からは渡したぞ?」
「…卑怯者」

後を向くとベテルと目が合った。
何か言いたそうなベテル。
そっと手が頬に触れる。
そのまま顔が近づいてきて…

「ふっ」

もう少しで唇同士が触れるという所でベテルが笑った。

「ふ、はは、はははは、志貴お前目くらい閉じろよ」
「はっ?てかビックリしたんだよ」
「本気にしたか?」
「お前からの悪戯かと思った」
「………これでドローだな、て訳で、いい加減眼鏡返せ視界がぼやけてるんだ」
「本気で目悪かったのか」

大事に持っていた眼鏡を返してやる。
それをかけたベテルともう1回目があった。
かぁっと顔が赤くなったのが分かった。
何で、あんな事…冗談にしても、もうちょっと違うからかい方があるだろ?

「志貴…」

ベテルが何か言おうとした時…

「あのー、もうお菓子配り終わったですか?」

と小さなノービスの女の子が寄って来た。
俺とベテルは顔を見合わせニッコリ笑った。

「では、合言葉を」
「あ、とりっく おあ とりーと!」
「はい、ちょっと少ないけどコレどうぞ」
「ありがとー」

カリオストロに貰ったお菓子を全部渡す。
それを見た女の子は笑顔でお礼を言いながら帰って行った。

「ベテル?さっき何か言いかけたか?」
「あー、いや…折角だしこの格好でニブルとか行ってみるか〜と」
「きっと転がるぞ?」
「それもいいんじゃないか?」
「そうだな、行ってみるか」

多分、大切な事を言いかけたんだと思う。
ベテルがまた言ってくれるまで待とう。
しかし、悩み事ならいつでも相談に乗るんだが。


ニブルに着いて10分。
転がったのは言うまでもない。




















おまけの落書き。