この前狩りに行ってから、志貴に微妙に避けられている気がする。
■告白
いや、避けられている気がするだけで一緒に狩りに行ってるし、話も普通にしている。
今日も会う約束をしている。
ただ、何か変だ。
その違和感が分からないから気になる訳で。
1人で悩んでても答えが出そうに無い。
とは言っても誰かに相談するような事でもないしなぁ。
「悩み事か?」
「ん〜」
どうも思っている事が顔に出ていたらしい。
その顔に気付いたシリウスが話しかけてきた。
「悩みっていうか…この頃志貴がさ変なんだ」
「変?」
「変って言うのも違う気がするけど、何か避けられてるような…」
「そりゃお前が悪いんじゃないか?」
「は?」
俺が悪い?
何か志貴が嫌がるような事をしたか…?
もしや、俺の気持ちに気付いて微妙に距離を置こうとしてるのか!?
「無理矢理に押し倒したとか、そりゃ嫌われるだろ」
「……………ん?」
「ん?って、お前まさか、まだ手出してないのか!?」
「まだ告白もしてないのに手出せる訳ないだろ!」
って何を大声で告白してるんだ。
はぁっと大きな溜息をつきながらシリウスが俺の肩を叩く。
「悩む前に自分の気持ち志貴に伝えろよ、話はそこからだ」
「それができたら苦労しない」
伝えて嫌われたら、俺は…
「にーた、そろそろ志貴さんと会う時間じゃないか?」
プロキオンの声に時計を見る。
約束の時間の5分前
「あぁ、行ってくるよ」
「当たって砕けてくるといい」
2人の兄の会話を聞いていたらしい、無邪気な弟の励ましの台詞を背中に受けながら家を出た。
と言うかプロキオン、当たって砕けたらダメだろ。
自分で出したポタに乗りプロンテラに着いた。
待ち合わせ場所は志貴のギルド。
約束の時間をちょっと過ぎたが、まぁ許してくれるだろ。
露店街を抜け志貴のギルドの溜まり場の近くまで来た時、志貴と2人の女性が一緒に居るのが見えた。
ナイトとダンサー?
志貴の入ってるギルドに女性は居なかったはず。
マスターの巴が少人数が好きな奴なので増員する気もないって言ってた。
じゃあ、あの2人は誰なんだ?
直接志貴に聞けばいいじゃないかと、1歩足を出した瞬間
「あの、1度お話したくて…」
そんな台詞が聞こえてきて思わず隠れてしまった。
これは、俗に言う告白って言うやつか?
ナイトの女の子が顔を真っ赤にして俯きながら一生懸命話している。
志貴は困ったような顔。
これは、俺が聞いていい話じゃないよな。
盗み聞きなんて趣味じゃないし、暫くして来よう。
それから20分後。
『ベテル、今日狩りに行く約束じゃなかったか?』
と志貴がWisしてきた。
適当に露店を回りながら時間を潰していたので、直ぐに志貴が待っている場所まで行く。
「悪い遅くなった」
「遅いから心配したじゃないか」
辺りを見回すとさっきの2人は居なくなっていた。
「あ、そうだベテル」
「ん?」
「これ預かったんだ」
志貴が差し出してきたのは手紙。
「さっき、ナイトの女の子が来てさ、お前の事気になってたんだって」
「は?」
「結構可愛い子だったぞ」
さっきの…志貴目当てじゃなくて俺が?
聞くと、俺に直接話しかける勇気がなくて、いつも一緒に居る志貴に話しかけたんだと言っていたらしい。
はぁっと溜息をつく俺。
とりあえず志貴から手紙を受け取った。
どうするかなこれ。
「やっぱりベテルもてるよなぁ」
「好きな奴にもてないと意味無いよ」
「え?」
言ってからしまったと気付いた。
「お前好きな奴いるのか、初めて聞いた」
「うっ、そりゃ言ってなかったからな」
「どんな奴なんだよ…と、その言い方じゃまだ片思いなのか」
笑いながら聞いてくる志貴。
いっそ、好きなのはお前だと言えれば…
「そう言う志貴はどうなんだよ、好きな奴いないのか?」
その言葉にビックリした顔をした志貴。
その後直ぐに苦笑しながら
「懐かしい台詞聞いた」
なんて言った。
「昔さ、師匠に言われたんだ、誰か好きな奴とかいないのかって」
「師匠…確か蒼さんだったか」
「あぁ、昔の俺さ、敵見つけたら迷いなく倒しに行くような奴だったんだ」
それが危なっかしい、後に誰か守る奴ができたらお前はもっと強くなると言われたそうだ。
「いつか俺にもそんな奴できたらなぁ」
「…っ」
その相手が俺じゃダメなのか?
口から出掛かった言葉を飲み込む。
「あ、ベテル今度好きな奴教えてくれよな」
「今度な」
「さて、今日はどこ行く?」
向けられる笑顔。
もう暫く、傍に居るだけで。
でも、もうそろそろ限界かも知れないな。
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続くのですよ。 |