一年前のあの日、私はこの方を一生守ろうと心に誓った。
■主従
主の名は昴様。
身寄りの無い私の事を拾い、面倒を見てくれた方の御子息。
「君、いく所ないのかい?なら、まだ小さいけど僕のギルドに入らないか」
モロクの砂漠、今にも倒れこんでしまいそうな時にその声を聞いた。
見上げるとペコペコに乗ったロードナイトが一人。
その傍には青い髪が綺麗なハイプリースト。
差し伸べられた手。
私はその手を取った。
月日は流れ、煌様の人望もありギルドは大きくなっていた。
私はクルセイダーになり、昴様も生まれ、一番楽しかった時代。
それなのに残酷にもその時は過ぎてしまう。
タナトスタワーに調査に出かけた煌様一行が帰らぬ人となってしまったのだ。
残された皆は昴様にマスターは無理だと決め付けギルドを抜けていった。
一人残された昴様。
「お前はどこにも行かないのか?」
一人、また一人と去っていくギルドのメンバーを見つめながら私にそう尋ねてくる。
じっと前だけを見つめ、泣きたいのを我慢しているのが分かった。
「私は何処にも行きません、昴様がいる場所が私の居場所です」
「ペルセウス…残ったのはお前だけだな」
ボロッ
と昴様の目から涙が零れる。
声もなく静かに泣く昴様を抱き締めながら、この方を一生守ってみせると誓ったのだった。
「ペルセウス、ついてくるな!」
「しかし御一人で狩りに出かけ何かあったらどうするおつもりですか」
あの後、煌様の親友であったロードナイト様を頼りプロンテラに渡った。
その方も私達の事を快く受け入れて下さった。
今は引退してギルドは御息子の巴様に任せている。
ギルドは小さいが皆心を許せる方ばかりだ。
昴様もすっかり元気になられて…
少々元気過ぎるくらいですか。
Sノビになられて以来ずっとソロで狩りに出かけてしまう。
回避も上がったし、ヒールだって使えるから平気だ!
と、仰っても心配な物は心配なんです。
「僕が信用できないのか」
「いえ、決してそのような事は」
私達の会話が聞こえたのであろう、巴様が会話に割り込んできた。
「ペルセウス、お前いい加減過保護止めたらどうだ」
「巴様まで、では静希様がお一人でオーク村に行っても心配じゃないのですか」
「あぁ、そんぐらい平気だな」
ガンッ
という音が頭の中に響く。
私は心配し過ぎなのか?
そんな事を考えていると
「話してるとこ悪いが、昴出かけたぞ?」
と志貴様が言った。
隣を見るとさっきまでいた昴様の姿がない。
「す、すみません!私行ってきます」
「気を付けてな〜」
暢気な声で送り出す巴様の声を背中に受けてギルドを飛び出した。
常にパーティを組んでいるので昴様がいる場所はわかる。
今日はフェイヨンの森の中…沢山ウルフがいる森ですね。
パーティが近くにいると出るマーカーの場所に辿り着く。
そこにはウルフ5匹程に囲まれている昴様。
咄嗟に助けようとしたが、よく見ると避けながら確実に一匹づつウルフを倒していた。
知らない間にこんなに強くなっていたとは。
確かに私の心配し過ぎだったのでしょうか。
そっと木の影から見守ってみる。
小さい体を活かし数匹のウルフを避けながら倒していく。
これなら昴様を信用しプロンテラへ帰っても大丈夫、と思った瞬間…
「うわっ」
っという昴様の声が聞こえてきた。
「昴様!?」
隠れていた木の影から飛び出す。
そこには体を押さえ辛そうな昴様。
「ペルセウス…お前来るなって言ったのに」
「そんな事言ってる場合ではありません、何処を怪我なさったんですか」
「け…がって、言うより毒…スネイク叩いた」
「緑ハーブは」
「持ってない」
「まったく、狩りに出かける時は万全にしてからお出かけ下さい」
言いながら昴様の傷口にハーブを当てる。
これで一先ず安心、だが後で志貴様に見てもらわないと。
「ごめん、やっぱりペルセウスがいないとダメだな」
ぎゅっと抱きついてくる昴様。
「私はいつでも傍にいますよ」
「うん」
数日後。
「ウルフ狩りに行くだけだから平気だ!」
「何を仰います、この前毒で苦しんだじゃありませんか」
「解毒覚えた」
「あぁ、貴方という人は…シーフじゃないんですから」
こんな会話も日常。
ただ、それが楽しいと思える大切な日常。
ずっとこんな毎日を昴様と過ごして行きたいと願う。 |